生まれて初めてAEDを使った話
これは練習ではない
実は筆者、エスカレーターから人が転落するのを見てしまったり、道ばたに人が倒れている*1のを発見して、救急車を呼んだことが何度かある。
また10年近く前、自動車教習所へ通っていたときに、心肺蘇生法の授業でAEDの使い方を学んだ覚えがある。
だが人形ではなく、実際に目の前で倒れている人にAEDを使うなんて初めてだった。
この記事では、特定防止とプライバシー保護のため多少のボカシを入れつつも、某月某日の某スポーツジムで起きた「実話」を述べていこうと思う。
ジムで起きた悲劇
某月某日のとあるジムにて。ダイエットを始めた筆者は、一通り筋トレマシンのメニューをこなしたので、仕上げのトレッドミル*2で歩いていた。
だが歩き出して数分後「ドッターン!」と激しい音がしたのだ。
最初は、誰かトレッドミルを踏み外したのか*3と思ったが、異様な数の人たちが集まっていた。
近づいてみると、筆者と同じようにトレッドミルをしていた、中年のオッサンが無言で倒れていた。ピクリとも動かない。
とりあえず口から血が出ているオッサンを起こすため、数人がかりでひっくり返した。しかし、オッサンの腕が引きつってカチコチに固まっていたのだ。更には息をしていない。
「これAEDを持ってきた方がいいんじゃないの?」
と誰かが言ったので、筆者は思わず叫んだ。
「AEDを持ってこーい!」
真っ先にジムのトレーナーさん達が駆けつけて、手際よく心臓マッサージを始めた。心臓マッサージは、そちらに任せた。
それから多少遅れてAEDが到着したので、多少もたつきながらも電撃パッドを取り出し、青い保護シートを剥がすと、オッサンの右胸と左わき腹に張り付けた。
「心電図を図っています。体から離れてください」とアナウンスが繰り返し流れるので、集まった人に、倒れたオッサンから離れるよう叫んだ。
そして測定が終わった瞬間、「電気ショックが必要です。体から離れてください」というアナウンスやサイレンと共に、カミナリのマークが描かれたボタンが点滅しだしたのだ。
相変わらず密集する人たちに離れるよう何度も叫び、最終的には
「さっさとやれ!!」
という誰かのの怒号でその場にいた人たちが離れた瞬間、すかさず電気ショックのボタンを押した。
ドラマのように飛び上がることは無かったが、それでもビクッとオッサンの体が反応した。
再測定の結果、「電気ショックの必要はありません。心臓マッサージと人工呼吸を続けてください」のアナウンスが流れたので、ふたたびトレーナーさんによる心臓マッサージが始まった。
AED本体からは、「この音に合わせて心臓マッサージを行ってください」と、ピッピッピッピッと電子音が流れていた。
なお、倒れたオッサンは口を切っていて血が出ており、とても人工呼吸が出来る状態ではなかった。
それから2回ほど心電図のチェックが入ったが、どれも電気ショックの必要はないと判断された。
その間になんと、倒れたオッサンが文字通り「息を吹き返した」*4。
しかもオッサンの大きな腹が上下に動き、僅かながら息をしているようだった。
「これなら助かるかもしれない」と筆者は思った。
そして救急車がやっと到着し、オッサンと一緒にジムに来ていた奥さんと共に、病院へ運ばれていった。
オッサンが倒れてから、短いようで長い30分という時間が経っていた。
突然死は怖い!
それから数日後、奥さんに会う機会があった。
聞いたところによると、大病院の集中治療室に送られるほどヤバかったらしいが、無事に意識が回復して、もうすぐ一般病棟に移れるようだ。
早めの発見とAEDが効いたようだった。
もし今回の事件が、人気のない風呂や更衣室で起きていたら、オッサンは助からなかった可能性が高い。
というのも、事件が起きたのは夜遅くで、その時間帯はジムに来る人も少なくなるからだ。
たまたまトレーニング室だったから人も多くいて、オッサンが倒れたことを早めに気づけたのだろう。
救命講習を受けるべきか?(まとめ)
「いつ」「どこで」「誰が」倒れるかは分からない。
先日には、アンパンマンのドキンちゃん役の鶴ひろみさんが、高速道路を運転中に大動脈乖離を発症して急死したばかりだ。
また今回の事件のように、心臓マッサージなどの応急手当ができる人がすぐ近くにいるという状況は少ないだろう。
『次』に備えて、自分一人で救急車の手配やAEDに心臓マッサージなど*5が出来るよう、消防署や赤十字の救命講習を受けておいた方がいいかもしれない。